保険営業をするきっかけ
生命保険営業の仕事を始めた頃はまだ結婚していて、子供が4歳と2歳でした。
毎日、子供と過ごすだけの日々。同じマンションのママ友とのおつきあいにも疲れていたし、お金も欲しいし。
そんな時、近所の人から「生命保険の仕事、やってみませんか。今なら研修受けるだけで、2か月分の給料までもらえますよ」と誘われたのです。
研修受けるだけで、お金がもらえるなんて♪
そんな美味しい話ある?
でも子供の預け先はどうする?
なんと!保険会社への就職をあっせんしてくれたAさんが、子供の預け先まで探してくれたのです。
マンションの一室でやっている、一時預かりのようなところです。
しかもその費用もAさんが負担してくれるというのです。
なぜ、私が働くためにここまでよくしてくれるのか?不思議に思いながらもお言葉に甘えました。
この理由は後からわかります。
そして、2週間ほどの研修を受けました。
毎日お弁当が出て、毎日帰りに日払いで日当がもらえました。
言うことないですよね、この待遇。
保険営業の実態
そして、支所に配属され、実際に保険の募集を始めました。
車がないと営業は厳しいので持ち込みます。
洋服もお客さんに会うので基本スーツとか、きちんとした感じの服がマストです。
先輩と一緒に車で住宅街に行き、片っ端からお宅を訪問します。
自分の顔の似顔絵を印刷し、「この地域の担当になりました」と名前を書いたビラを持って。
私、結構度胸があるというか、そういう自宅訪問は苦手ではないんですね。
もちろんジャケンにされることが多いので、心が折れることもあるのですが、それでも明るく元気に訪問していました。
一緒に行った先輩から、「あなたうまいわね」とほめられることも。
でも、それで保険がとれるかどうかは別問題です。
結局保険がとれてなんぼです。
実際、一般の家を訪問して保険がとれる確率は限りなく低く、ほとんどは身内の人に入ってもらうことが常識でした。
最初は金額関係なく、一か月2件のノルマでした。
個人保険などは単価が低く、あまり評価されませんが、定期付き終身保険、つまり夫が死亡した時に3千万とか、5千万とか高額な金額が下りる保険が一番保険会社が儲かるので、それをなるべく取るように言われていました。
何か月かに1回、保険月というのがあって、その時は5千万がノルマでした!
5千万なら家族持ちの男性が1件入れば達成できる金額ではありますが。
先輩がじわじわと「家族で入れそうな人いない?」と攻めてきます。
皆、次々と親族の契約をとってきます。
保険契約の闇
うちの夫は以前からその生命保険会社の保険に入っていましたが、「転換」という技を使って、大きい金額の保険に入り直しました。
転換というのは、保険の積立部分を下取りして、そのお金を新しい保険の一部に当てるのですが、予定利率が下がることが多く、契約者は損をし、保険会社は得をすることが多いです。
でも、定期部分、つまり死亡時もらえる金額が増えるプランに変更されることが多く、契約者は何か得した気持ちになるのです。
ほとんどの人は60歳までに死ぬことはまれなので、死亡時何千万というお金を手にすることはできません。
終身の100万~300万ほどのお金しかもらえないのです。
保険を契約している人はこういう仕組みを知らないというか、保険の営業が巧みに話すので理解できず、ただ「保険入ってる。死んだら5千万もらえるらしい」くらいの認識です。
この「転換」の説明不足によるクレームはかなり多いそうです。
日本人は保険好きで80%以上の人が何らかの保険に加入しており、新たに保険加入してもらうことは非常に困難です。
私は保険会社にいる1年ほどの間に、身内で加入してもらったのは夫のその保険だけでした。
後は、地道にお宅を訪問し、赤ちゃんがもうすぐ生まれるという人に学資保険に入ってもらったのと、また別の男性に定期付き終身保険に入ってもらいました。
たった2件ですが、地道な家庭訪問で我ながらよく頑張ったのではないかと思います。
保険に入っていただいたお礼のグッズも自分自身で会社から買って、お客さんにあげなければなりません。
保険の仕事を経験した人がよく、身内に全員入ってもらってもう入る人がいなくなったから、仕事を辞めたということをよく聞きますが、私は身内は夫だけだったので、辞めるときも親族に謝ったりせずにすみました。
収入ですが、1年目は保証されていて、保険がとれてもとれなくても10何万かの収入はありました。
しかし、2年目になるとノルマを達成しなければ、だいたい5~6万ほどの収入になると聞いたのです。
それでも、保険の営業というのはかなり自由のきく仕事なので、保険がとれさえすれば本当にいい仕事です。
私も仕事の合間に子供の用事をすませたり、同期としょっちゅうお茶したり、ショッピングしたりしていました。
そのため、専業主婦だった時より収入が増えたにも関わらず、支出も増えました。
保険の仕事を辞める時の代償
保険の仕事を始めて1年後、もう専業主婦で無収入の生活は考えられず、仕事を探し、クレジットカード会社にパートで就職を決めました。
退職の希望を上司に話すと、「辞めるなら1本とってきて」と言われました。
まるでそうすることが当然であるかのように。
友人にお願いして名義を貸してもらい、個人保険に入りました。
1ヵ月7千円ほどの掛け金で、私が2か月ほど代わりに掛けて辞めました。
保険の営業というのは2種類あって、1つは単純に保険に入ってもらうこと、もう1つは保険の仕事をする人を探すことです。
特に保険の仕事をあっせんすることがとても効率がいいのです。
保険の仕事に入ると、上からの圧力もあり、何か月かの間に自分を含め、少なくとも数本の保険に入らざるをえなくなります。
それらのほとんどがすぐに解約され、掛け金はすべて保険会社の利益になります。
こちらの方が保険にただ入ってくれる人を探すより、会社にとってはよほど効率がよいのです。
ある程度実績を上げてきた人達は、仕事をしてくれる人をたくさんあっせんすることで、収入がぐんと上がるので多少の経費には目をつぶるのです。
私が仕事を始める時、子供の預け先の費用まで負担してくれたのはこういう事情からです。
保険募集員の儲けは
ところで、保険に入ってもらうと、どのくらい儲かるのか、気になるところですよね。
実際は目に見えての儲けはありませんでした。
保険金額に対して何%かが、何か月にもわたって少しずつ支払われるので、よくわからないというのが正直なところでした。
しかも、その人が早い段階で保険を掛けるのをやめてしまうと、私たちはもらった報酬を返さなければならないらしいのです。
これは厳しいですよね。
保険の営業を1年やってみて、車、洋服代、景品代、お茶代などで結構経費がかかる、でも経費の割に儲からないということがわかりました。
でも、保険について学ぶことができたので、いい勉強にはなりましたね。
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