「トイレ行きたい」と何回も言う
高齢者はかなりトイレが近い。
何かをしている時は訴えないが、何もすることがない時、なかなか眠れない時などはトイレ、トイレと10分おきくらいに言う。
しかも今トイレに行ったことをすぐに忘れる。
「今行ったばっかりです」と言っても、「言ってないよ」と怒り気味で返してきたり、「だって行きたいもん、お願い」と懇願口調になる。
そのたびに連れていくのは、いくら仕事といっても本当にイヤになる。
他にも仕事があるのに、進まない。
それで「さっき行ったでしょう、もう少し我慢して」と言ってその場を離れたり、車椅子を動かし、トイレから遠ざけたりする。
または「膀胱をきたえましょう。我慢した方がいい」と説得する言葉を言う。
そんな説得がきくはずもないのだが。
「どうぞ、行って下さい」と半ばほったらかしのような言い方をすることもある。
しかし、転倒されたら困るので、離れて見守る。
聞こえてないふりをして無視し続ける介護士もいる。
私の職場のある男性介護士は、トイレの訴えがあると何回でもイヤな顔ひとつせずに連れていく。
本当に感心する。なかなかできることではない。
「さっき行ったからもう出ませんよ」とか「膀胱のために」とかそういう言葉は全く意味がないのだ。
無視するのはもっとよくない。
認知症高齢者はその時その瞬間を生きている。
その場その場で対応しなければいけないのだ。
「家に帰りたい」と言って立ち上がる
急に立ち上がって「家に帰る」という高齢者。
これは本当に困る。
転倒につながるからだ。
だいたい夕方に訴えることが多い。
夕暮れ症候群だ。
こういう場合、介護士は「もうご飯できてるから、食べて帰ったらどうですか」と声を掛ける。
認知症の高齢者は「あら、ご飯あるの。じゃ食べて帰ろうか」と言う。
一件落着と思いきや、数分後にはまた「家に帰ってご飯の支度をする」と言って立ち上がる。
そのたびにまたさっきのフレーズを言う。
延々と続くこのやりとり。
そして夕食後、ベッドに入った後もこのやりとりは続く。
「家に帰らないとお父さんが心配する」
この場合は「お父さんには電話して話してますよ。今日はもう遅いので明日の朝、一番に帰りましょう」と介護士は言う。
すると「そうですか。じゃ、そうしましょう」と言って高齢者は一旦は横になる。
しかし、またすぐに起きて同じフレーズを言う。
根気のいる仕事だ。
精神的にやられる。
こういう時は「ちょっとお茶でも飲みませんか」と言って、お茶やココアなどを勧めたりする。
そうすると高齢者は喜ぶし、気分が変わって、こういう訴えをしなくなることもある。
でも、だめな時もある…。
おむつを自分で外して漏らす
これはもう、あきらめて黙々と作業するしかない。
おむつ交換のために部屋に入ったら、すごい尿臭や便臭がする。
布団をはぐった途端、ものすごいことになっている。
泣く泣く服を着替えさせ、シーツや布団カバーを替える。
時間を結構とられるし、疲れる。
反応のない人には何を言っても仕方ないのだが、こちらの言うことがわかる人にはついつい「何でこんなことするの」など文句を言ってしまう。
言ったところでどうにもならないが…
でも言わずにはいられないもの。
作業だと思ってテキパキ片づける。
夜なかなか寝ない
高齢者は不眠の人が多い。
ほとんどの施設や病院は夕食後はベッドに戻るのだが、認知症のある不眠の高齢者は夕食後も起こしている。
認知症だけど、動けて過去に転倒歴がある高齢者のベッドにはセンサーがついていて、起き上がったり、立ち上がるとセンサーが反応するようになっている。
無理に寝かせてもセンサーが何回も鳴るし、起きて転倒されても困るので、夕食後も起こしておく。
そして職員が仕事をしながら連れて回る。
こういう高齢者が常に2.3人はいる。退院してもまたこういう人が入ってくる。
夜勤で働く私たちにとって、夜寝ない人が一番困る。
とにかく寝てほしい。悲願だ。
それにしても何で高齢者はあんまり寝なくてもすむのだろう。
眠前薬を飲んでも全然効かない。
いつ見ても起きている高齢者。
夜寝ないので、昼も起こされている高齢者。
車椅子に座ったままで、さぞかしお尻が痛いだろう。
この人はこの先ずっとこうなのだろうか。
もう家に帰ることはできないだろう。
何が楽しくて毎日過ごしているのだろうか。
ここを退院しても、また別の施設でこんな状態になるのは多分間違いない。
年をとるということは本当に残酷だ。
介護者にうとまれる高齢者だけにはなりたくないと、いつも思う。
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