私が介護業界に入った頃の話をします。
44歳の時に13年働いた会社が倒産し、失業しました。
半年ほど失業保険をもらっていましたが、毎日食べて寝て、テレビを観て過ごすだけの毎日に「このままでは自分がダメになりそう」と思い、就活を決意。
しかし、40歳オーバーでスキルのない女に仕事がそう簡単に見つかるわけもなく。
介護の仕事なら「経験なしでもOK」という職場はたくさんありましたが、きつくて汚いと言われているその業界に足を踏み入れる勇気はなく、家の近くにあった和菓子製造の工場に就職しました。
正社員での採用ということでしたが、時給計算で週休2日、社会保険などを引かれた手取りは10万円を切ることもあり、ボーナスも寸志程度でここでは生活が成り立たないと1年あまりで退職しました。
食品製造の現場は衛生第一なので、毎回完璧に掃除を行う為、かなりハードで1年あまりで5キロ体重が減少しました。
また、お菓子製造の裏側を知ることもできたので、これはこれでいい経験でした。
その頃、チラシに出ていた特別養護老人ホームの求人に応募し、未経験でも可とのことで、無事採用されました。
しかし初めて見た介護現場は私の想像をはるかに超えたものでした。
当初私が思っていた老人ホームのイメージは、お年寄りがテレビを観たりお茶をしながら談笑したり、穏やかなゆったりとした感じ…
それが、打ち砕かれる衝撃の現場でした。
まず、入所者はトイレ組とおむつ組に分かれており、トイレ組の10数人のお年寄りは車椅子に乗せられ、廊下に一列に並べられ、1人の介護職員が「監視」していました。
1人のお年寄りが「トイレに行きたい」と言い、そのお年寄りをトイレに連れていっている間に他のお年寄りが立ち上がって転倒したりすると事故となり、あとの処理が大変なので、トイレの訴えはひたすら無視して、決まったトイレタイムが来るまで監視を続けます。
この車椅子に座らせられているお年寄り達は、何をするでもなく、廊下なのでテレビが観れるわけでもなく、ただじっと座り続けるのです。時間にして朝の5時半から夜の6時半くらいまでです。
なぜ、座らせられているかというと、起こしたり寝かせたりする手間が大変だから、部屋で寝かせていると何をするかわからない、こけたりするとめんどうだから一か所に集めて監視するというわけです。
入所者全員がほぼ認知症ですし、職員も最低の人数しかいないので、そうしないと回らないのです。
一方身体がほとんど動かない寝たきりの利用者は、食事が終わるとすぐに寝かされます。転倒するなどの危険があまりないからです。
このような現場に異常さを感じながらも、こうしないと仕事にならないから仕方ない、と思うようにしていました。
それに、この介護現場にはパワハラが横行していました。
お年寄りが転倒したり、皮膚の剥離を起こしたり、事故が起きると、どの職員がやったのか、と犯人捜しをします。
お年寄りに原因があり、職員にまったく落ち度がなくても見守りが足りなかったとチクチクと責められます。
本来ならば、事故の報告は次の事故を未然に防ぐためにあるものなのに、職員は上司の批判が怖くて隠そうとします。
仕事で何かミスすると、現場で一番上の立場にいる女性主任が他の介護職員にミスした職員の悪口を陰で言い、またさらに施設長にも報告します。多分に偏見が入った報告です。
主任が個人的に気にいっている職員のミスであれば、自分の権限でもみ消したり、カバーしてやったりします。
介護現場は忙しくストレスがたまりやすいので、人の悪口を言うことでストレス発散していることが多いとよく聞きます。
給料は他の介護施設に比べてかなりよく、ボーナスもしっかりあってその点はよかったのですが、そんな現場だったので職員の離職率が高く、いつも募集しているのに、ほとんどが3か月から1年以内にやめていきました。
人間関係のトラブルが嫌で、主任や施設長にへつらい、まったく入所者の立場にたっていない介護をしていくことが嫌でたまらなくなり、働いて7年目に退職を決意しました。
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