私は毎日毎日、認知症高齢者に対応している介護福祉士です。
一か月ほど前に入院してきた90歳代の女性が、最近よく訴えること。
「ご飯食べてない。何で食べさせてくれないの」
一日に何回も何回もナースコールを鳴らしてそう言ってくる。
正直、うんざりしている。
こういう場合、認知症の人に対するマニュアルとしては
「今、ご飯作ってますから、もう少しお待ちくださいね」
みたいな対応がよいとされている。
決して、「もう食べたでしょ」などと強い口調で言ってはいけない。
認知症の人は「食べたこと自体を忘れる」からだ。
そして、認知症の人は「怒られた」ということだけが記憶に残るらしい。
そのことが認知症を進行させると言われている。
しかし、その時の私は強めの口調で
「もう食べました!」
とはっきり言いました。
「うそばっかり。食べてないよ」
おばあさんはそう言う。
「とにかく食べました!」
そう言って私はその場を離れました。
もういいかげんにしてほしい、何回も何回もナースコール鳴らしてきて。
その後の昼食時、おばあさんは食事を半分くらい残していました。
「いつもいつもご飯食べてないって言うでしょ。だから全部食べて下さい」
私がそういうと、「もう食べれません」と言って食べない。
そのくせ、また1時間もたたないうちにナースコールを鳴らしてきて
「ご飯食べてないよ」
と言う。
はっきり言っていらいらするのです。
うちの病院では5回食というものがあります。
普通の人は朝昼夕の3回食ですが、一度にしっかり量が摂れない人とか、糖尿病の人で血糖が下がらないようにするためなどに10時と15時にもプリンとかジュース、おにぎりなどを提供するのです。
そして、そのおばあさんにも5回食で10時にプリン、15時にヨーグルトを提供することになりました。
それなのに、プリンを食べても
「プリンじゃお腹いっぱいにならんよ。ご飯食べさせて」
と言ってくる。
食事したことを忘れているから、何を食べても一緒なんですよね。
この話を他の介護士としていた時、ある先輩の男性介護士は
「そんな時は、『あなたはご飯を食べました。あなたの頭がボケてるから忘れてるんでしょ。ちゃんとご飯出してるのに、食べさせてもらえないなんて言わないでください』ってはっきり言えばいいんですよ」
と言うのです。
えっ、そんなこと言っていいの?
「まあ、そんなこと言っても理解してくれないし、また同じこと言うけどね」
「でも、相手が認知症じゃない一人の人間として対応してるんだから、間違いじゃないよ」
「毎回同じこと言われて、イライラして自分がストレス溜めるより、はっきりものを言った方がすっきりするでしょ」
と言われて、思わず「そうよねー」と言ってしまいました。
本当はこんな対応、間違っているでしょう。
認知症の研修会の講師に聞かせたら、「絶対ダメな対応です」と言われるでしょう。
上の人が聞いていたら注意されますね。
でも、私たちも人間、いつもマニュアル通りの神対応はできません。
毎回毎回同じことを言われると、精神的にやられます。
介護福祉士は認知症高齢者への対応を知識としては知っているし、研修なども受けてはいるけど、それを実践して根気よく対応していくのはなかなか難しいのです。
気持ちに余裕がある時は、できるだけ頑張って優しく対応しましょう。
でも、余裕のない時は、はっきりものを言ってもいいのでは。
これがこの仕事を続けていく秘訣なのかもしれないと思いました。
コメント