仕事に向き不向きってあるのでしょうか。
たいていの人はある程度、自分の適性を把握していて、
「この仕事は自分に向いている」「向いていない」
という判断をして、求職するようです。
人と話すのが好き、得意なので、営業の仕事をしようとか、
人と関わりたくないので、一人で黙々とする作業的な仕事を選ぶとか。
そういった傾向はあるかもしれません。
でも、それが本当に仕事の向き不向きに関係しているのか…?
職場に今現在、仕事の適性に悩んでいる男性がいます。
彼は40代半ばで勤続25年以上。未婚。
無職の親兄弟と一緒に暮らしていて、一戸建ての家のローンもあり。
家族の生活は自分の肩にかかっていて、この年齢で辞めるなんていう選択肢はないはずなのに。
「この仕事が向いてないので、辞めた方がいいのかも」
そう悩んでいるらしいです。
彼は仕事ができない男です。
要領が悪く仕事が遅い、いつも何か忘れている。
悩むきっかけは、患者さんに「ノロマ!」と怒鳴られて、頭にきたことらしい。
今まで、患者さんを嫌いだと思ったことはないのに、この時心の底から患者さんを嫌いと思ったらしい。
それ以外にも、勤続年数が長く誰よりも給料がいいことで、給料ドロボウと言われたり、
あまりに仕事ができないので、他の人がたくさんいる前で、ある同僚から1時間近くこっぴどく怒られたり。
今まで逃げてきた仕事と、どうしても向き合わないといけなくなったり。
そんなことが続いたことが原因のようです。
確かに「ノロマ」と言われたら頭にくるけど。
認知症の人が暴言を吐くのは普通のことです。
給料ドロボウは確かに言いすぎですけどね。
しかし、彼は仕事ができないのに、努力をしているようにはまったく見えないのです。
苦手なことやイヤなことから25年以上ずっと逃げてきて、活を入れられてもそれは仕方ないと思います。
しかし、そんなに長く働いてきて、今さら「向いてない」って何?
仕事に向き不向きは確かにあるかもしれませんが、ほとんどの人は「この仕事向いてない」と思いながらも働いているものです。
だいたい、向き不向きなんてどうやって判断するのでしょうか。
「向き、不向きは他の人が見て決めることだと思う」
「そんなことは関係なく、働くしかない」
そう言う人もいました。
私は好き嫌いで言ったら、ほとんどの患者さんのことが「嫌い」です。
私に介護の仕事は多分、壊滅的に向いていません。
お年寄りの話をじっと聞くのも苦手、何か要求されたらめんどくさいなと思う、認知症の人が同じことを何回も言ったり、したりするとイライラする…。
本当に私ってこの仕事向いていません。
でも、もう12年以上続けています。
思考停止で淡々と働く、それが仕事というものだと思っているからです。
今から15年くらい前、13年勤務した建設関係の会社が倒産して路頭に迷っている頃でした。
何となく占いのお店に入り、仕事の相談をしました。
「私にはどんな仕事が向いていますか?」
すると占い師の人は
「あなたはどんな仕事でもできます。事務員でも店員さんでも介護でも、何でもそれなりにできます」
そう言ってくれました。
その言葉を聞いたので、私は介護の世界に就職することもそれほど不安ではなかったのです。
でも、「それなり」というところがミソなのです。
まあ、平均的にはできるというところなのでしょうか。
すごーくできるわけでも、全然できないわけでもなく、まあそこそこできる。
向いているといえば、向いてるかもしれないし、向いてないといえば、向いていないかもしれない。
非常に微妙な感じなのですが、向き不向きなんてその程度のものなのかもしれないと私は思っています。
仕事の向き不向きで悩んでいる方、そんなものはないと思って下さい。
とにかく働きましょう。
定年退職を迎えた頃、「あの仕事は自分に向いてなかったな」とわかるかもしれませんね。
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