介護士が転職する理由

介護業界で10年以上働く私がなぜ転職したのか、お話ししたいと思います。

ご訪問いただき、ありがとうございます。

介護福祉士として、病院で働いているアラ還の女性です。

特別養護老人ホームで8年弱働いたあと、病院に就職して4年になりました。

私が働いていた施設は社会福祉法人が経営しており、定員は55名。

55名の利用者に対し、午前中は4~5人、午後は4人の介護士がお世話をします。

朝、7時半から食事の介助がはじまり、それが終わったら歯磨きをしてすぐに寝かせて、おむつを交換します。そしてまたすぐに起こします。

おむつ交換の時は陰部洗浄といって、陰部をお湯などで流し、温かいタオルで拭くようになっていますが、時間をかけられないのでささっとタオルで拭くだけです。

汚れたおむつは床に投げ捨て、あとから回収、これも時間短縮のためです。

トイレに行ける人は食事後、歯磨きをしてもらいトイレに連れていきます。

すべてを朝の引継ぎまでの1時間半で終えなければなりません。

尿や便が漏れている人がいたりすると、もう大変です。

便が体のあちこちについていて、拭くのも大変。

着替えさせたり、シーツを替えるのに時間をとられるし、介護士は本当にイライラします。

「何で漏れるのっ!」と言っても仕方ないことを言い、怒鳴ったり溜息をついたり。

引継ぎが終わっても、まだまだ忙しく、外部から書道の講師や音楽の講師などが来るので、それに参加する利用者を連れていき、それが終わるまでずっと見守りし、その時の記録をパソコンで打たなければなりません。(その時はパソコン打てないので残業します)

その間にもトイレに連れていったり、掃除をしたり、お茶を作ったり、仕事は限りなくあります。

やっと午前の業務が終わり、今度は昼からの勤務の人が登場します。

また食事の介助をし、歯磨きをさせて、トイレに連れていったり、寝かせたり。

午前中の勤務の人は休憩が終わると、今度は入浴です。

1時間半くらいで、27人の利用者を流れ作業で入れます。

基本的には利用者は朝から晩まで起こされています。

おむつ対応の人はおむつ交換をする時だけは寝かせますが、その時以外は起こされています。

何度も起こしたり、寝かせたりすると介護士が大変なので、その労力を省くためです。

そのため、利用者を一列に並べて、ずっと見守る介護士が1人います。

急に車椅子から立ち上がってこけたりする利用者に対応するためです。

ほぼ100%認知症の人なので、訳のわからない妄想などにもつきあわされます。

「子供を学校に連れていく」「今からごはんを炊く」などならまだまし。

「子供がアル中で」と言いながらずっと泣いて、急に立ち上がる利用者。

また同じ歌をずっとエンドレスで歌う利用者にはイライラします。

ずっと「家に帰る」と言いながら、何回も立ち上がる人もいます。

「トイレに行きたい」としつこく言われても、その場を離れられないので、無視します。

その場を離れて、その間に別の利用者にこけられたら困るのでひたすら無視です。

見守りは神経がすり減ります。

またその日のリーダーという人がいて、おむつ交換や食事介助もしますが、業務全般を見たり、最後はその日の日誌をパソコンでつけます。

リーダーは確実に1時間程度は残業になります。

例えば、熱のある人がいたらその人の体温などの記録、食事量、様子などを記入したり、前日こけた人がいたら今日のその人の様子など記録します。

全ての介護士は細かく分単位で業務があり、くたくたになって一日が終わります。

それだけではなく、毎月行事があります。

花見、敬老会、夏祭り、餅つき、など定番もありますが、オリジナルの行事も考えなくてはなりません。

その企画、準備、運営などのため、残業したり、家で作業したりします。

これが一番大変でイヤでした。

昼間は看護師もいますが、介護の業務を手伝ってくれることはなく、ナースコールがあっても対応はしてくれません。

そのため、介護士と看護師は仲が悪く、いつも陰口を言っています。

1日中、業務に追われ、利用者と話すことはほぼありません。

「寄り添う介護」など、ただの理想です。

そして、介護士は忙しさで皆イライラしているので、先輩は新人に冷たいです。

「育てよう」などという意識はないので、新人はすぐに辞めます。

介護士の一番上である介護チーフは人のアラ捜しがうまくて、仕事が遅い、あれを忘れてた、などと文句を言い、ミスをするとチクチク嫌味を言い、陰でまたその人の悪口を言います。

もしも、利用者がこけたり、どこかにぶつかって皮膚を損傷したりすると、事故報告というものを書かなければなりません。

どういう状況で起こったか、その時どうすればよかったのか、今後どうしていくのか、を細かく書いて提出します。

事故を起こすと上司に責められます。

利用者が急に立ってこけても、それは見守りが足りなかったと言われ、介護士一人の責任であるかのように言われます。

特に骨折したなどの重大事故では、処理が面倒でずっと引きずります。

そんな感じで人間関係は最悪でした。

「自立支援」と言って、利用者ができることは自分でしてもらう、そうすることがリハビリになるのですが、自分でしてもらうと時間がかかりますよね。

たとえば車椅子に移る時とか、下着を脱いだり上げたりする時とか。

危険がないか見守りながら、じっと待たなければなりません。

しかし介護士はじっくり待つ時間の余裕はないので、さっさと介護士都合でやってしまいます。

それなのに、少し時間がある時は「自分でして」と冷たく突き放し、必死で立ち上がり下着を上げている利用者をにやにやしながら見ていたりします。

ここに入所しているお年寄りは人間扱いされていない、と思うことがよくありました。

人生の先輩に敬意を示すようになどと言われていましたが、言葉遣いは最悪で、敬語なんてまったく使うことはなく、陰では名前を呼び捨てしていました。

この施設に自分の親を入れたいか、と聞かれたら、多分全員が「ノー」と言ったでしょう。

自分の親を入れたくないような施設で働くことに、ずっと疑問を感じていました。

介護施設はブラックなところが多いと聞きます。

どこも似たり寄ったりではないでしょうか。

それはほとんどが人手不足によるものだと思います。

「仕事だから」「お金をもらうため」と割り切って働いていました。

その頃の給料は、月に4回夜勤をして手取りで16万ほど。

ボーナスは年間70万弱、処遇改善金が年間合計35万ほどでした。

介護施設としては、処遇改善金がしっかりともらえていたので、いい方ではなかったでしょうか。

もう50歳を超えていたので、転職はかなりの勇気が必要でした。

そこがいくらイヤな職場でも慣れれば同じことの繰り返しだし、新しいことを覚えるのは年をとればとるほど困難でストレスになります。

しかし、人間関係にも疲れ、ハードすぎる仕事で腰や腕を痛め、精神的にも追い詰められ、退職することにしたのです。

そして、今度は介護施設ではなく、雑用でいいからもっと精神的に楽に働ける職場で働きたいと思い、介護士がメインではない「病院」という職場を選んだのです。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました