【老老介護の果て】医者の母親が入院してきた

私は療養型の病院に介護福祉士として働いています。

勤めている病院には、わざわざ身内を入院させる職員が結構います。

私なら母を自分が勤める病院に入院させたくはないけど。

だって、色々言われるのがわかりますから。

あの人のお母さんはめんどくさい人だとか、色々要求が多いとか、わがままとか。

看護師たちは患者のことを好き勝手に言うものです。

知られたくないことまで、知られてしまうし。

しかし、あえて自分が勤めているところに入院させたがる職員もいるのです。

様子を見にいきやすいとか、

自分や家族の入院だと、入院費用が半額ですむからかもしれません。

ただし、自分が勤務している病棟ではなく、別の病棟に入院します。

そして、先日うちに勤務している医者の、お母さんが入院してきました。

こちらのお母さん、80歳前でお父さんと二人暮らし。

もう2年くらい、家とうちの病院を行ったり来たりしています。

医者の息子はお母さんを施設に入れたくないのか、両親が二人で家で暮らしたいと言っているのか、意地でも自分が勤めている病院に入院させるのです。

介護しているお父さんが体力的、精神的に厳しくなってきたら息子に相談し入院。

お父さんが元気になったら、お母さんも退院して二人でまた暮らす。

何回も何回も入院したり退院したり。

家で暮らしたいのはわかるけど、本人も落ち着かないのではないかと思います。

そして、このお母さん、なかなか性格が激しい人のようで。

前回、2年くらい前に入院してきた時は、いきなりその日の夜勤の看護師と衝突しました。

看護師の言い方が気に入らないといい、医者の息子に部屋から電話して告げ口しました。

医者はその看護師に直接話を聞けばいいのに、すぐ総師長に文句を言いにいったのです。

総師長といえば、看護師の中で一番偉い人ですから、それからうちの師長に話がきて、看護師が注意されて。

職権乱用ですよね。

そんなこんなで、それから私たちは皆、はれ物に触るように対応。

ゴタゴタがめんどくさいから、「ハイハイ」と言うことを聞いていました。

どうにかこうにか、2か月余りで退院。

それなのに、またやってきましたお母さん。

病院を出たり入ったりしているうちに、病状はかなり進行していたよう。

相変わらず口は達者でしたが。

腰は右方向に曲がり、車椅子を使ってやっとこさトイレに行けるレベル。

今回そのお母さんが入院してきた日、私は夜勤でした。

前回を思い出してとりあえず、丁寧な対応と笑顔を心がけました。

「髪を短くされたんですね」

と話しかけると、

「前にもいらした方?」

と言って、気持ちがほぐれたのか、それから家で何回も転倒したことや、脳梗塞を起こしたこと、何回も病院と家を行ったり来たりしていることを話してくれました。

「リハビリ、頑張りましょうね。早く家に帰れるといいですね」

と言うと、

「そう言ってもらえると嬉しい」

と少し涙ぐんでいました。

前に入院していた頃より、とげとげしさがなくなって、すっかり気弱になっている様子です。

度重なる発作や転倒、入退院ですっかり人が変わってしまったようでした。

高齢になって、病気などで体が不自由になった場合、自宅で生活することはとても困難です。

介護者も高齢であれば、お互い共倒れになってしまうことも。

それでも、できるかぎり家で過ごしたいと願う、その気持ちはよくわかります。

医者である息子さんも、お母さんの状態はよくわかっているだろうし、お父さんの介護負担も見ている。

でも、ご両親の気持ちを尊重したいのでしょう。

退院後は今度こそ、施設に入るとは言っていましたが、どうなることやら。

「このままだとお父さんが大変でかわいそう」

とお母さんも言っていました。

退院しても家に帰れず、施設に行かざるを得ない人が増えてきています。

死ぬまで家で過ごせるように、健康寿命を延ばす生活習慣を早くから身につけたいものです。

 

 

 

 

 

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