「家に帰りたいのよ」
「お願い、帰らせて」
「タクシーに乗って帰るから大丈夫」
「よそでは眠れないの」
入院しているおばあさん、こんなことを言いながら立ったり座ったりして、まったく落ち着かず、大変でした。
職員が何を言っても聞き入れず。
あー言えばこー言う、状態。
91歳で、認知症あり。
家で転倒して骨折し、入院してきて3か月。
本人は骨折したことはもう覚えておらず、強制入院させられたと言っています。
「私たちに人権はないの!?」と叫んだこともありました。
毎日、「今日はじめてここに来た」と思っています。
「今日、息子さんは忙しいらしいですよ」
「息子さんは家にはいないので、今日はここに泊まって明日帰ったらどうですか」
そう職員が言っても、聞き入れない。
「お願い、帰らせて」
の一点張り。
こういう時は家に電話して、直接家族と話してもらうことも多いです。
直接話すことで、落ち着くことも多いからです。
しかし、今日は午前中すでに息子さんと話したそう。
そんなに何回も何回も家に電話できませんよね。
たくさんの職員が入れ替わり立ち替わり、説得します。
ココアを勧めて気を落ち着かせようとしても、一気飲みしてまたすぐに
「家に帰らせてよ」
と言います。
職員の説得などはこんな時、まったく意味がないように見えます。
理屈を言ったところで、認知症の人は納得しません。
一旦、納得したように見えてもすぐに忘れて同じ訴えをします。
帰りたいものは帰りたいのです。
今日はなかなか手ごわい。
そうこうしているうちに、日勤勤務の時間が終了。
後は準夜勤務さんにお任せです。
日勤勤務の職員はたくさんいるので、目が届くし何とかお世話することができますが、17時を過ぎると職員は4人しかいなくなるので、目が届きにくくなります。
夕食を食べさせて、歯磨きをして、寝かせて、食堂の片付け。
ものすごくバタバタします。
落ち着かない高齢者は、職員がバタバタの時に立ち上がって転倒することが多いです。
しかし、落ち着かないからと言って、一人の患者だけにかかっているわけにもいかないのです。
夜勤は手当が別につくので、患者がよく眠ってくれれば楽でラッキーなのですが、こんな風に落ち着かない患者がいる時は大変です。
相手にしているとだんだんイライラしてくるので、最後には無視します。
施設に勤務していた頃は本当に人手が足りなかったので、このようなおばあさんは最初から完全に無視していました。
話を聞くとか、なだめるとか、そういうことは一切なくほったらかし。
まだ、今の病院の方がちゃんとした対応をしています。
昨日、あんなに元気に職員に反発していたそのおばあさん。
今日は打って変わっておとなしく、何もしゃべらずにじっとしています。
夕方になると「帰りたい」と言い始める認知症患者は多いです。
そんな時は可能な限り、話を聞くことが大切です。
めんどくさくて無視したり、ほったらかしにしていませんか。
どうせわからないのだからと適当な返答をしたり、うそをついたりしていませんか。
時間をかけて何度でも同じ訴えを聞いてあげること、決して否定しないことが大切です。
しかし、これがなかなか難しい。
わかってはいるのですが、これがきちんとできている人は介護福祉士でもあまりいません。
私も日々反省です…
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