私は療養型病院で介護福祉士として働いています。
親に介護が必要となった時、その時になってあわてなくてもいいように早くから考えておくことはとても大切です。
親の介護が不幸な介護にならないように心がけておくべきことを、私の経験からお話します。
必要な情報は自分で集める
介護保険制度、自治体のサービスなどを事前に調べておくことが大切です。
私の父は16年前に亡くなりましたが、最期は認知症を患っていました。
認知症の問題行動が増えてきたころ、介護保険の申請をして、介護度3と決定し、ケアマネージャーが決まりました。
ケアマネージャーの言う通り、今まではかかっていなかった精神科の病院にかかり、向精神薬を処方してもらい、ショートステイやデイサービスを利用しました。
向精神薬は父の問題行動を抑制するためでした。
薬を飲まさないとウロウロするので、施設で父の面倒をみるのが大変だからです。
あっという間に父はうつろな目をして、よだれを垂らすようになりました。
施設を申し込んではいましたが、なかなか父の行先は見つかりませんでした。
待っていればケアマネージャーが何とかしてくれると思っていました。
でも違うんですね。
ケアマネージャーは施設を探してくれたりはしません。
自力で探さなければならないんです。
それがやっとわかり、私達家族は施設を探して見学を繰り返しました。
しかし、すぐに入れる施設は本当に高くて、安くても月20万近くかかるのです。
運よく、知人の方のご厚意でやっと老人保健施設が見つかり、入所しました。
老人保健施設の費用は10万以下で割と安めです。
ケアマネージャーにそのことを伝えると、驚いていただけで「よかったですね」の言葉もなかった。
そりゃそうです、もうそのケアマネージャーの担当を離れるのですから。
お客さんを一人失うのですから、「よかった」とは言えませんよね。
私達家族は、このことをまったく理解していませんでした。
ケアマネージャーという人は家族の思いを汲み取ってくれる存在ではなく、いかに自分が利益を得るかを考える職業の人だということがやっとわかりました。
人任せにするのではなく、情報を得ることや施設探しは自分たち家族でやらなければならないことを理解しておくことは大切です。
必要な支援は全部受ける
介護が必要になったら施設に入れればいいだろう。
そう考えていませんか。
親が施設に入ることを望むでしょうか。
自由度が高く、費用も高い有料老人ホームならいざ知らず、比較的安価な施設はまったく自由がなく、高齢者は管理されていると言ってもいい状態です。
安全ではあるけど、ただ、食べて寝るだけの生活です。
起きる時間、寝る時間も管理され、食べたい時にお菓子を食べたり、コーヒーを飲んだりもできない。
私が高齢者になったら、施設には入らずできるだけ自宅で生活したいと思います。
介護認定を受けて、できるだけサービスをフルに使い、ヘルパーに来てもらったりしてなるべく自宅での生活を続けます。
デイサービスにも行きたくないです。
皆と一緒に体操したり、ゲームしたり、あんまり楽しいとは思えません。
家族は高齢の親が一人暮らしだと心配かもしれません。
ですから親が元気なうちから、今後どうしたいかをよく話し合っておくことが大切です。
もし親ができるだけ自宅で過ごしたいと望むなら、できるだけ一人暮らしを続けていけるよう、使えるサービスを調べて手続きしてください。
延命治療はどうするか考えておく
高齢者は年をとってくると飲み込む力が弱くなり、だんだん食事ができなくなります。
食べても誤嚥をしてしまうことも多く、食事することが命取りになることもあります。
そんな時、医者に「胃ろうをしますか」と問われ、知識がないために安易に胃ろうを選んでしまう人が多いです。
胃ろうというのは、お腹に穴を空けて、直接胃に栄養を送る方法です。
一度つけるとはずすことは難しいし、安定して栄養が摂取できるので長生きします。
うちの病棟にも何十年もその状態の患者さんがいます。
この状態で何十年、本人も家族もつらいのではないでしょうか。
いざと言う時、胃ろうを選ぶのかどうするのか、考えておいた方がいいと思います。
身体機能を維持させる
年をとった親を見ていると、「心配で何もさせられない」「転倒されて骨折でもしたら大変だから外出させたくない」そう考える人もいるでしょう。
でも、少しでも健康で長生きしてもらいたいなら、できるだけ何でも自分でしてもらいましょう。
転倒リスクがあるから歩かせないのではなく、転倒してもいいから歩かせることです
何でも自分でしないと、どんどんできなくなります。
本人も甘えず、自分のことは自分でしましょう。
そうすることが、認知症リスクを下げますし、身体機能を維持させることに繋がります。
まとめ
親の老いはいつか必ず来ます。
いつかは必ず向き合わなければいけません。
その時になってあわてなくていいように、準備できることは早くから心がけておいてほしいと思います。
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