今から35年以上前、私が就職した時の研修の話です。
私が就いた仕事はある大手化粧品メーカーの美容部員でした。
研修は合宿所のようなところで1か月間泊まり込み。
寮母さんが3食食事を作ってくれました。
あの頃は携帯電話もなく、夜になると1台だけある公衆電話に皆が集中。
毎日毎日、座学と実技の繰り返し。
2人1組で相手にマッサージをしたり、メイクをしたりの練習。
そんな研修の中で、観た映画が「てんびんの詩」です。
昔々に企業の研修を受けたことがある人はご存じなのではないでしょうか。
あの頃は何これ?古いわーと思い、面白くないなーと思ったし、
感想を書かなければならないので、観ることは観たけど、内容について深く考えることはありませんでした。
あらすじを簡単にお話します。
主人公、近藤大作は小学校を卒業した。
近江の大きな商家の家に生まれた彼は、何不自由のない生活を送っていた。
父は大作に小さな包みを手渡す。
中には鍋のふたが入っていた。
父はそれを売ってこい、売ってこなければ跡継ぎにはできないという。
しかたなく、大作は鍋のふたを売りに行く。
最初は店に出入りする人々に押し売りのようにしてすすめる。しかし売れない。
道行く人に声を掛けてもまったく見向きもされない。
大作は親を恨み、買ってくれない人達を恨んだ。
父と母がつらい気持ちで見守っていることなど知る由もなかった。
人前で卑屈になったり、泣き落としをしても、だれも鍋のふたを買ってはくれなかった。
そんなある日、農家の井戸の洗い場に浮かんでいる鍋のふたをぼんやり見つめながら、大作は考えた。
「鍋のふたが無くなったら困るやろな。困ったら買うてくれるかもしれん」
しかし、次の瞬間に
「この鍋ふたも誰かが難儀して売ったものかもしれん」
そう思った大作は思わずその鍋ふたを手に取り、一生懸命に洗い始めた。
その農家の女は怪訝そうな顔をしていたが、大作の気持ちを知って鍋ふたを1枚買ってくれた。
そして、近所の人たちにも声を掛けてくれたのだ。
おかげで大作の鍋ふたは売り切れ、彼は「売る者と買う者の心が通わなければ物は売れない」という商売の神髄を知るのだった。
大作は父もしたようにてんびん棒に鍋ふたの売れた日を書き込み、両親の待つ家に帰った…。
こんなお話です。
いかがでしたか。
こちらはイエローハットの創業者、鍵山秀三郎氏が制作、企画、資金提供をした近江商人の物語だそうです。
近江商人を表す言葉に三方良し(売り手によし、書い手によし、世間によし)という言葉があります。
これは商売の基本というものを教えてくれるお話です。
解釈の仕方やこの映画が何を伝えたいのか、見方は色々あるかと思います。
営業は「物やサービスを売る」ことです。
商売というのは押し売りするのではなく、お客さんに喜んで買ってもらうものであること。
自分が売る商品に対して、愛情を持たなければ売ることはできないということ。
物の価値を提供することの大切さ。
子供に商売の厳しさを教える親の愛情の深さ。
この映画は色々なことを私たちに教えてくれるのではないかと思います。
古い古い映画ですが、最近の新人研修ではこの映画はまだ使われているのでしょうか。
さすがに今は使われてないかな…。
もし機会があれば、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
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