介護で人生が崩壊する人たち

自宅で配偶者や親を介護する人たちが虐待したり、殺人事件にまで発展してしまうケース。

ニュースでよく見ますね。

施設に勤務していると、措置入所といって家庭内で虐待に合い、一時的に避難のために入ってくる高齢者がいます。

また、病院でも同じような理由で入院してくる高齢者がいます。

その多くは認知症を発症していて、家族から虐待に合ったためか体のあちこちに青あざを作っています。

息子に虐待されていたおばあさん

以前勤めていた施設に、顔の右半分に大きくあざのあるおばあさんが入所してきました。

息子の虐待に合っていたということでした。

虐待するのは息子が一番多いらしいです。

でも、そのおばあさんは「こけた」と息子の虐待は覚えていない様子でした。

しばらくして、施設が無事決まりおばあさんは退所しました。

今、勤務している病院にも家で夫が虐待していたため、妻が入院してきたケースがありました。

認知症の高齢者の介護は本当に大変です。

介護を仕事としている人でも、その対応にはうんざりするのです。

何度も同じことを言う、何度も同じことをする、トイレの訴えが半端なく多い、夜寝なずに何度もナースコールを押す…。

たった数時間、そんな高齢者に対応するだけでも精神は疲弊します。

イライラして、冷たい態度になったり、無視することもあるのです。

でも、たった数時間だから面倒をみることができるのです。

これが、親や配偶者だったらどうでしょう。

終わりのない介護の日々が続くのです。

親や配偶者に対する思い

私の父は認知症を発症し、最期は肺炎で亡くなりましたが、母は父の認知症である姿をなかなか認められずにいました。

「あんなにしっかりした人だったのに」

そう思えば思うほど、目の前の父の姿が許せなかったのです。

母は虐待はしていなかったと思いますが、父の言動にイライラして強い口調で言い返していたことはよくありました。

家族の認知症の症状を認められず、ついつらく当たってしまったり、暴力を振るってしまうということがよくあります。

そんな自分がイヤで自分を責める、でもまたつらく当たってしまう、その繰り返し。

そんな家族の対応は本人にとって決してプラスになることはなく、認知症が進むこともあります。

介護者が穏やかに対応することが、認知症高齢者も穏やかに暮らせる秘訣です。

夜中のトイレと失敗

認知症高齢者はトイレが近いので、夜中に何度も起こされることが多いです。

仕事をしながらの介護であれば、毎晩何度も何度も起こされるのは本当にキツイと思います。

トイレに起こされて、ちゃんとトイレで用を足せるならまだいいです。

尿や便を漏らすことも多いのが認知症高齢者です。

便がおむつや紙パンツから漏れて、ズボンまで汚れている。

便が出たのが気持ち悪かったのか、便を触ってあちこちに塗り付けている。

服はもちろん、布団やベッドの柵なども便だらけ。

もう最悪です。

介護の現場ではこういうのは日常茶飯事なので、要領よくテキパキと片づけます。

シーツは業者が洗ってくれるし、何人かで手分けして処理できます。

でも、家庭では洗濯も処理も自分一人です。

こんなことが続けば精神的にまいってしまいます。

私の母は最初は父を夜中にトイレに連れていっていましたが、起こすのが大変になり、おむつをつけるようになったのですが、量が多く毎朝漏れていたそうです。

夜中に1、2回おむつを交換するとか、下におねしょシーツのようなものを敷けばよかったのですが、当時の母も介護の仕事をしていなかった私にもそんな知恵はありませんでした。

排泄の失敗は一番精神的にキツイと思います。

徘徊

認知症高齢者はいつの間にか外出していて、なかなか帰ってこないということがよくあります。

疲れを知らず、何キロでも歩きます。

私の父は散歩が大好きで毎日毎日午前中、何時間も出かけていました。

最初のうちは家に帰れていたのに、認知症が進行するにつれ、なかなか帰ってこなくなり、毎回捜しにいかなければならなくなりました。

そして、転倒して道に倒れていたところを通行人に発見され、救急車で病院に運ばれたのです。

退院後母は、父が自力で開けられない複雑な造りの鍵をドアにつけました。

そして、もう面倒見きれないとデイサービスを利用する手続きをしたのです。

散歩をさせてあげたいけど、毎日毎日何時間も当てもなく歩く認知症の人についていくのは、はっきりいって無理です。

出かけられなくなった認知症の人は、ストレスがたまるし、認知症がさらに進行していきます。

食事の用意

認知症高齢者は嚥下機能が落ちてきて、普通の食事が食べられなくなる人が多いです。

また歯を失ったり、入れ歯の不具合があったりして食べにくくなっている人もいます。

水分もそのままではむせてしまうこともあります。

その場合、食物を小さくきざんだり、とろみをつけたりという手間がかかります。

自分で食べたいという意欲があるならよいのですが、食事に興味が持てなくなっていることもあり、食べさせなければならないこともあります。

食べさせるのも、なかなか口を開けなかったり、咀嚼に時間がかかったり、これも大変な仕事です。

他人に預けてもいいのです

親や配偶者を施設に預けようとすると、親戚や周囲の人が口を出してくることがあります。

「家で見れないの」

「かわいそうに」

「お金かかるでしょう」

一緒に暮らすのが当たり前、家で見るのが当たり前、そういう考えの人が多い。

本人だって家で暮らしたいはずです。

私も施設に入った父の面会に行った時、あてもなくウロウロと歩いている父を見て、

「お父さん、家で暮らしたいよね」

と思い、たまらなくつらくなったのを覚えています。

しかし、家での介護にはいつか限界が来るでしょう。

介護どころか、自分のことすらできなくなる可能性があります。

介護に疲れ、仕事もできなくなるかもしれません。

家庭で介護することは限界がある

自宅で介護するにはこのような壁がいくつもあります。

精神的に追い詰められ、つらく当たってしまう、虐待してしまう。

他人に預けることに罪悪感を感じることはありません。

日中だけでも、預けてリフレッシュしましょう。

介護は介護のプロに任せればいいのです。

 

 

 

 

 

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