退院しても行き先がない高齢者

red flower arrangement on white table

最近、退院した80代のおばあさん。

足を骨折して半年入院していましたが、やっと家に帰りました。

退院日、お迎えに来たのは長男。

長男は60代で未婚、コンビニでアルバイトをしているらしい。

今までずっとバイト人生だったそう。

退院の迎えに来たというのに、職員に対して挨拶もロクにできないような人。

そして次男は結婚しているが、いつもいつも実家にやってきてはお金を無心していくらしい。

今までこのおばあさんは、必死に自分と長男の生活を支えてきたのだろう。

骨折は治ったけど、他にも病気があり、外出して買い物をしたり、家事をしたりできるような状態ではありません。

施設に入る方が安心だし、本人も楽なのですが、お金がないのです。

家で暮らす方が圧倒的に生活費は安くすみますから、仕方ありません。

頼りない息子たちのことも心配なのでしょう。

「帰ったらご飯どうしますか?」

と尋ねると、

「兄ちゃん(息子)に弁当でも買ってきてもらうしかない」

と言っていました。

普通は早く退院したいと思うものですが、

「家に帰りたくない」

とよく言っていました。

このおばあさんはこれからどうなるのか。

退院だというのに、何かすっきりしないものを感じながら私たちはお見送りしました。

それから、ずいぶん前に退院した100歳近い、おばあさん。

やはり骨折してリハビリのために入院していました。

年相応の物忘れはあるものの、受け答えはしっかりしていました。

以前から家にヘルパーさんや訪問看護の人が出入りしていたようですが、人に頼るのが嫌だと何でも自分でするため、ヘルパーさんは

「病院に薬を取りに行くのと、ゴミ出ししかすることがない」

と言っていたそう。

絶対、施設には入らない、最後まで家で暮らすと言い切っていたおばあさん。

周囲にスーパーなどはない住宅街の、古い大きな戸建てに住んでいるそう。

かくしゃくとしていて、カッコいい人でした。

他の職員は頑固だと言っていたけど、私はこんなおばあさんのようになりたいと思いました。

ただ、高齢になると、どうしても一人暮らしには限界があります。

足腰の衰えで、外出ができなくなることが多く、病院に行ったり、買い物に行くことが困難になるのです。

どうしてもできないことが増えてきて、誰かに頼らざるをえなくなります。

入院のきっかけは骨折だったのに、入院中に色々な病気が見つかって治療していると入院が長引く。

入院が長引くと認知機能が落ちてくるし、日常生活動作が自分でできなくなってくる。

そして結局、施設しか行くところがなくなる人がとても多いです。

反対に入院することによって、ゴミ屋敷に住んで食べるものもないような困窮した生活から助け出される人もいます。

たまたま発見されて病院に搬送され、社会福祉士が介入し、生活保護が受けられるように手続きをしてくれ、その後施設に行くところまで世話をします。

最低限の生活もできていない困窮した生活をしている高齢者はとても多いです。

そして、誰にも相談できず、ただ家に閉じこもって細々と生活をしているのです。

以前、うちの病院に転院してきた男性は、繁華街で倒れていたところを発見されたそうです。

身元がわかるものを何ひとつ持っておらず、本人も意識はあるけど話すことはできない。

こういう場合、名前がわからないので、とりあえず発見された市区町村名で名づけるようです。

例えば、福岡市博多区で発見されたなら博多太郎とか、熊本県南小国町で発見されたら南小国太郎とか。

男性は太郎、女性は花子みたいです。

そのうち名前が判明する場合もあるようですが、この方は容態が急変してまた転院されました。

「そんな名前じゃない」

と本人はずっと言いたかったでしょうね。

 

 

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