退院したおばあさんからもらったもの

私は療養型病院で、介護福祉士として働いています。

先日、翌日退院予定のおばあさんの部屋に行き、挨拶をした時のことです。

「明日退院ですね。おめでとうございます。お世話になりました。お元気で」

と私が挨拶すると、

「ああ、色々お世話になりましたね。ありがとうございました。何もあげるものがないけど、これ」

そう言って、きれいに色鉛筆で塗った1枚のカレンダーをくれました

今月のハナミズキの花の絵でした。

右上にはそのおばあさんの名前が。

一生懸命、色塗りしてくれたんだな…と思って、目頭が熱くなりました。

以前、入院していた別のおばあさんは退院時、私あてに箱入りのお菓子らしきものを別の介護士に預けてくれました。

直接だったらこのような贈り物は受けとらないようにしているのですが、他の介護士が預かっていたので仕方ありません。

その包みを開けてみると、手紙と一緒に5千円札が入っていました

やっと読める字で、「ありがとうございました」と書かれていました。

これは受け取れないと思いました。

他の介護士に相談したけど、「もう退院したし、もらっておけば」との回答。

でも、やっぱりもらうわけにはいかないと、住所を調べて、休みの日に車で家を探して訪ねました。

訪問看護やヘルパーさんが毎日のように出入りしていると聞いていたので、直接会うのはためらわれました。

事前に大きな文字で書いていた手紙を添えて、そっと郵便ポストに入れました。

どうしてもこのようなお金は受け取れないこと、困ったことがあったら病院に電話したり、ヘルパーさんに相談してほしいこと、お体に気をつけてほしいことなどを書きました。

本当は会ってお話したかったけど、ヘルパーさんに自分の立場を説明するのがわずらわしく、またおばあさんがお金を受け取ってくれない可能性があったので仕方なかったのです。

あのおばあさん、お元気にしていらっしゃるでしょうか。

あの頃、90代半ばでした。

私が勤務している病院にはコンビニが入っていて、患者さんの買い物はある程度自由です。

でも、行き来している間に転倒したりする恐れもあるので、職員が付き添うこともあります。

一緒にコンビニに行くと、患者さんは私たちに気を遣って、お菓子やジュースをくれたりします。

もちろん、お断りするのですが、最後には根負けしてしまいます。

また、退院時にお菓子を持ってこられる家族も多いです。

だいたい半数くらいが持ってこられるでしょうか。

退院時だけでなく、年末にお菓子や果物を差し入れてくれたり、バレンタインデーの時にチョコレートをくれたりするご家族もいます。

職員は皆疲れていて、甘いものに飢えているので、単純に嬉しいですね。

基本的には贈り物のたぐいは受けとってはいけないきまりになっていますが…。

病院はこんな風にいただきものが多い所のようです。

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